Story
その食堂はいつも冒険者たちで賑わっている。
いつだって、無愛想だけれども気の良いマスターが迎えてくれる。
モットーは「グルメガイドに載るほどではないけれど、そこそこ安くそこそこうまい」。
冒険者たちは“うまい”とも“まずい”とも言うわけでもなく、明日の英気を養い、これから始まるであろう旅について語らう。
これから始まる『困難な旅』について…。
魔王の出現により、世界は闇に包まれる。
幾人かの腕に覚えのある冒険者たちが魔王に挑み…破れた。
『旅人食堂』から旅立っていった冒険者たちも、その多くが二度と帰ってくることはなかった。
世界は勇者の登場を待ち望んでいた…。
その日は不思議な一日だった。
『旅人食堂』にはロクでもない冒険者ばかり訪れた一日だった。
ホラ話ばかりの戦士、プライドばかりで魔法が使えない魔法使い、臆病な格闘家…。
でも、彼らは夢を語る。
「もしも今、本当の勇者が目の前に現れたら、自分だって…!」
そこに現れた、一人の少年。
少年は冒険者たちが見たことの無い服『制服』を着た中学生だった。
異世界から現れた、伝説の『本物の勇者』の登場を喜ぶ冒険者たち。
しかし、そんな冒険者たちに少年は「魔王とか、世界の破滅とか…、おじさんたちサムいよ」
どこにでもある食堂で繰り広げられる、情けない大人と冷めた少年の噛み合わない会話。
立ち止まってしまった大人と、
未来を信じない少年が、手を取り旅立つ時『奇跡』は起きるのか―。
これは、それぞれの勇気が試される物語。